2005年7月号

生え始めで決まる歯の運命

生え始めが肝心!

歯の運命は、生え始めの時期に決定されるといっても過言ではありません。生え始めの時期に唾液中のミュータンス菌が多ければ、その子どもは虫歯になりやすく、よい細菌が優勢であれば虫歯になりにくいからです。

歯が生え始めた時に真っ先に歯に付着するのは「ムチン(酸性唾液糖タンパク)というものです。そして、このムチンによって覆われた歯の表面の膜は「ペリクル」と呼ばれています。このペリクルに虫歯を引き起こさない善玉の常在菌の代表・サングイス菌やミティス菌などが付着しれば、健全な歯垢が形成され、歯の表面は守られます。

こうなると、唾液の緩衛機能が有効に働き、歯の表面の持続的なPHの低下が避けられるので、ミュータンス菌が真っ先に歯に定着した場合に比べると虫歯になりにくいし、ミュータンス菌が入ってきても排除されます。ですから、甘いお菓子を食べても虫歯になりにくいのです。

ところが、歯の生え始めに唾液の中にミュータンス菌がたくさんいる子どもは、生え始めの歯のペリクルにこの菌が定着してしまい、よい細菌が定着するのを妨げてしまいます。ミュータンス菌は、歯の表面や歯と歯の間などにのさばって、いずれは虫歯になってしまいます。たとえミュータンス菌の感染を完全に防ぐのは困難だとしても、感染の時期を遅らせるだけでも有効なのです。せめて、よい常在菌が付着して健全な歯垢が形成されるまで、感染を遅らせる努力をしてほしいと思います。甘いお菓子は子どもにはとても魅力的です。お母さんとしては、虫歯になるのが心配で食べさせたくはないけど「食べちゃいけません」と言い切れる人は少ないでしょう。どうしても「しょうがないな~少しだけよ」と妥協してしまいます。

お母さんが仕上げ磨きをしましょう

でも、ペリクルによい菌を植え付けることができた後なら、甘いお菓子を食べても虫歯になりにくいのですから、それまでの辛抱です。完全に禁止するのは無理でしょうが、せめて砂糖を使う量を減らし、おやつの時間を決め、だらだらとお菓子を食べたりすることだけはやめましょう。おやつには砂糖が少なく、口の中にとどまる時間が少ないものがオススメです。チョコやキャラメルよりも、果物や野菜を使ったデザート!ジュースよりは、お茶や牛乳の方がよいでしょう。おやつを食べた後は、すぐに口をゆすいだり歯磨きをするようにしましょう。

少なくとも、永久歯が生え揃い、免疫機能が完成する12歳まではお菓子をはじめとする砂糖の量をコントロールする必要があるのです。乳児期には、親子で楽しみながら歯磨きをし、正しいブラッシングを習慣づけることが大切です。最後は、必ずお母さんが仕上げ磨きをしてあげるようにしてください。