2010年4月号

唾液の働き その2

唾液の働き

以前に取り上げたことのある「唾液の働き」について、もう少し詳しく解説します。

唾液は大唾液腺と小唾液腺から分泌されます。正常な唾液の分泌量は1日あたり平均1.0~1.5リットルです。常に口の中には2~3ml存在しています。その内、1mlは粘膜や歯面に存在しています。

大唾液腺:耳下腺、顎下腺、舌下腺の3つがあります。
小唾液腺:耳や口などの粘膜面に多数存在しています。
*唾液分泌は一般的に夜になると減少します。この時、唾液の作用とその機能も低下します。

  • 口の中をきれいにします(自浄作用)

    唾液は99.5%が水分であり、安静時0.3ml/分、食事時などは1.0~1.7ml/分も分泌され、口の中を洗い流しています。また、細菌を凝集させる働きもしています。

  • 食べ物を消化します(消化作用)

    唾液にはアミラーゼ、リパーゼなどデンプンを麦芽糖に変える消化酵素が含まれています。

  • 咀嚼・嚥下・味覚を助けます(凝集作用・溶媒作用)

    食物の表面を柔らかくし食塊を形成し咀嚼(噛み砕く)と嚥下(飲み込む)を容易にしまた、食物を溶解して未蕾(みらい-味覚細胞)に運び、味を感じさせます。

  • 微生物とたたかっています(生体防御・抗菌作用)

    唾液1mlの中には約7~8億個の常在細菌が含まれており、細菌同士がバランスを取り合い共生し、外来細菌が口の中へ侵入した時、バリアとして作用しています。唾液の抗菌因子には免疫グロブリン(lgA、lgG、lgMなど)と、非免疫グロブリン(ラクトフェリン、ラクトパーオキシダーゼ、リゾチームなど)があり、微生物の毒性物質の産生を抑え、微生物の増殖を抑制し、直接・間接的に作用して抗菌します。

  • 口の中のpH(ペーハー)を調整しています(緩衝作用)

    唾液の中に含まれている重炭酸イオンやリン酸イオンは飲食物や菌によって産生される酸を中和してpHを元の状態に戻します。

  • 粘膜を守っています(潤滑作用)

    ムチンなどの成分は口の中の粘膜が切れたり割れたり磨耗しないように保護しています。

  • 歯を守り、修復します(再石灰化作用)

    唾液は抗菌作用・緩衝作用により歯を守ると同時に酸で溶かされてしまったエナメル質を、カルシウムやリンなどを再沈着させ修復します。

  • 発声を助けます(円滑作用)

    構音・発話、発声をスムーズにします。

この他、老化防止ホルモンと呼ばれているパロチン、傷ついた細胞の修復を促すEGF(上皮成長促進因子)、脳神経の成長を促すNGF(神経成長促進因子)など、重要な物質が含まれていることが専門家により研究・発表されています。

★実践アドバイス(発泡洗浄剤、アルコール)
歯磨き剤に発泡洗浄剤として含まれている「ラウリル硫酸ナトリウム」は唾液成分のムチンを破壊し、口腔粘膜の保護層を分解してしまいます。洗口剤に含まれているアルコールは粘膜面の脱水を起こし「ムチン層」を破壊することが知られています。口腔乾燥の方は、これら粘膜刺激成分を含んでいない口腔ケア製品をお使いになることをお勧めします。
また、基本的に体内に水分を取り入れる(水を1日2リットル程度)こともお勧めです。