歯の豆知識

2013年7月号

親から子供へのむし歯感染(垂直感染)

垂直感染

母親にむし歯が多いと子供もむし歯になりやすいと言われていますが、本当でしょうか?

むし歯の原因は、周知のとおりニュータンス菌等のむし歯菌と、各個人が持っている宿主防御機構(むし歯になりやすいか、なりにくいかの体の免疫機能)と生活を取り囲む環境から成り立っています。そのため母親、すなわち生活を共にする保育者から子供への感染は充分に考えられます。

むし歯菌は垂直感染?

親から子供へと感染することを「垂直感染」と言います。それに対して、夫婦間や友達同士で観戦する場合を水平感染と言います。むし歯菌は、母親から子供へと感染する垂直感染でよく例にあげられます。一般的に人の口の中には約500種類の細菌が存在していますが、この中で善玉と言われる細菌は、口の中へ悪い菌が入り込むとそれを食べるなどして、口の中の環境を整えようとしてくれます。

一方、悪玉といわれる菌の一つであるむし歯菌は、糖分を食べてプラーク(歯垢)を作り、これが出す酸によって歯という硬い組織を溶かし、むし歯になります。このむし歯は、はじめの頃は歯の色が白濁色や黒褐色を呈する程度ですが、放っておくと次第に溶けて穴があきます。そこに食べ物が詰まったりすると、痛みを感じるようになり、最終的には歯髄(神経)まで侵されてしまいます。むし歯はミュータンス菌等による感染症なのです。

子供に噛んであげた食片と一緒にむし歯菌も…

では「いつ、どこで」むし歯菌に感染するのでしょうか?生まれたばかりの赤ちゃんの口の中には、むし歯菌はいません。ミュータンス菌は、歯などの硬い組織に付着するのが得意な細菌で、乳歯の生え始まる頃から感染します。これは離乳食が始まり、母親が自分のスプーンで食べさせたりする日常生活から起こってきます。

つまり、母親の口の中が汚れていて、母親が子供に食べやすいように噛んだ食片を与えたりすると、むし歯菌も同時に与えることになります。むし歯菌はいったん定着すると、非常に頑固に口の中に住み着くため、歯ブラシだけの清掃では取り除くことが困難な場合があります。その際には、歯面をキレイに器具を用いて清掃し、フッ化物を塗布したりします。

子供のむし歯菌の治療では「歯磨きをよくする」「甘いお菓子やジュースは続けて飲ませないように」などと言われますが、子供自身だけでなく母親も自分自身の口の中をキレイに心がけることが大切です。母親から子供への食べ物を介してのスキンシップは大変重要なことです。キレイな口での介入が望まれます。

少子高齢化が進んでいますが、子供を甘やかしすぎて食生活が偏ったりすることを防ぎ、毎日の生活の中で規則正しい生活習慣を作り上げることが、母子供にむし歯予防への道となります。