2017年5月号

ストレスがお口の健康に及ぼす影響

2015年12月より、ストレスチェック制度が導入されました。
これは、具体的にはどういうものでしょうか。
「ストレスチェック」とは、ストレスに関する質問表(選択解答)に労働者が記入し、それを集計・分析することで、労働者自身のストレスがどのような状態にあるのかを調べる簡単な検査です。
「労働安全衛生法」という法律が改正され、2015年12月から、労働者が50人以上いる事業所では、全ての労働者に対して毎年1回この検査を実施することが義務づけられました(厚生労働省ホームページより)。

さて、この「ストレス」と歯科、お口の状態とは何か関係があるのでしょうか?
実は日常の歯科検診で意外によくあるのが、この「ストレス」による「歯ぎしり」です。
しかし自覚症状があり、歯科医師に相談してくれるケースはまれです。
時々、本人ではなく配偶者の方から寝ているときの「歯ぎしり」がひどく、なんとかしてほしいというような訴えを受けることはあります。

また「歯ぎしり」と一言で言っても、実は3種類くらいあるのです。
一般的なものとしては、①上下の歯をまさにギリギリとこすり合わせるタイプ、①と似ていますが少し違う②上下の歯をカチカチカチと鳴らすタイプがあります。
この2つは、横で寝ている夫婦や親子にとっては深刻な問題で、相談を受けやすいケースです。
また少し違う雰囲気なのが、③強く、ぐーっと上下の歯を噛みしめるタイプです。
このタイプでは、朝起きたばかりなのに肩が凝っている、頭痛がする、などといった訴えがあったりします。

「歯ぎしり」の害
歯ぎしりがひどくて横で眠れないといった訴えも十分「歯ぎしり」の害といえますが、実際にはもっとさまざまな弊害があります。

破折
強く噛んでしまったり、歯を食いしばることで歯が欠けたり、ひどい場合には歯が真っ二つに割れることもあります。また、せっかく治療した詰め物や被せた物が外れたり割れたりすることがあります。

知覚過敏
歯が割れるまではいかなくても、歯の根元が少しずつ欠けることによって、冷たい水がしみたりする知覚過敏を起こすこともあります。

歯周病
歯ぎしりは歯周病の直接の原因ではありませんが、歯を揺らすことによって、歯周病菌が歯ぐきに侵入しやすくなり、歯周病が悪化することがあります。

顎関節症
強く噛む力が、歯や歯ぐきだけではなく、あごの関節にまで影響を及ぼすことがあります。
あごの関節には関節円板という軟骨がありますが、それが傷ついたりして、あごが痛くなったり、聞きにくくなったり音がしたりすることがあります。

肩こり・頭痛
口を開けたり閉めたりする筋肉は、いくつかあります。
まず、噛みしめる筋肉の一つの側頭筋はこめかみから頭の側方部分にあり、この筋肉がいわゆる凝った状態になると頭痛がしたりします。
また下あごから首、胸にかけて広がっている広頚筋という筋肉が凝ると、肩こりになる場合があります。
朝起きたばかりなのに肩が凝っているという場合は、夜「歯ぎしり」をしているのかもしれません。

「歯ぎしり」がある場合どうすればよいのでしょう?
かみ合わせの異常で「歯ぎしり」が起きている場合もあり、この場合は、噛み合わせを調整することで良くなることがあります。
また子どもの場合は、乳歯から永久歯に生え変わるときに「歯ぎしり」が起きることがありますが、この場合は生え変わると収まる場合もありますので、あまり心配しなくてよいでしょう。
ストレスが原因で「歯ぎしり」が起きている場合は原因であるストレスをなくすことは難しいと思われます。
しかし「歯ぎしり」による害を防ぐ方法はあります。
「ナイトガード」と呼ばれる夜寝ている間につけるマウスピースを使用すると、「歯ぎしり」による害はかなり少なくすることができます。
これは普通に保険治療として認められていますので、自覚症状があったり、配偶者の「歯ぎしり」でお悩みの方は、ぜひ近くの歯科医院にご相談下さい。