先日来られていたS硝子株式会社創始者のお孫さんが再び来院されました。先日の麻酔カートリッジの話の続きを聴きたいと思い、話しかけてみました。
「たくさんのカートリッジを製造されているんですね。ほんとにビックリしました。」
「ええ、外国製もたくさん輸入されているようですが、国産はほとんど自社のものですからね。でもね、コストは安いんですよ。」
「でも、特殊技術でしょうから、需要がたくさんおありなんでしょうね。」
「ええ、大量に生産しているから、なんとかやっていけてるんですけど。麻酔カートリッジの販売価格が1本だいたい60円くらいとしたら、ウチが1本出荷する値段が3円60〜70銭くらいですよ。もちろん材料費も含めてですよ。だから、ほんとにたくさん売れなかったら、コストが合わないんです。」
「国産だから、品質もいいし、高く売れるんじゃないんですか?」
「ええ、シェアは広いですが、出荷の値段は輸入物とあまりかわりませんよ。だから、結構裏側は大変です。」
「そうですか。90%って聞いていたので、独占企業みたいなものだと思っていました。」
「ええ確かに。昔の藤沢薬品(現アステラス製薬)とか、昭和薬品化工とかの工場見学に行かせてもらったことがあるんですが・・・一般の人は入れませんけどね。薬品を注入するのも結構大変な作業です。歯科用の麻酔剤は、煮沸消毒ができないんです。薬品の性質が変化してしまうからです。だから、常温で無菌状態で詰めるんですよ。無菌室で、まず、底にプレジャー・シリコンゴムを詰めて、その上に液を注入して、上からパッキンゴムを被せて、蓋をするんです。」
「あっ、先に底のゴムを入れてから、上をパッキングするんですか?へぇ〜!!逆だと思っていました。」
「そう、でもね、無菌室を作るのが大変みたいです。無埃と無菌は大きく違いますからね。」
いろんなことを詳細にお話してくださり、私達が知り得ない世界を垣間見せていただきました。今までS硝子の営業部長が治療に来られていましたが、そんな内輪の話は聞いたことがありませんでした。私が興味を持ったこともあってか、ほんとにストレートにお答えいただいて、嬉しい限りです。麻酔薬の出来上がる工程をちょっと見てみたくなりました。
ふと思ったのですが、使用済みの麻酔カートリッジのリサイクルは無いんですね。感染を懸念してでしょうか?再利用のコストが見合わないからなのでしょうか?この話をきいてから、いつも無意識に捨ててしまっているのを「もったいない」と思うようになりました。
そして・・・
物づくりの種明かしは、物を大切にして人の熱意を大切にする、人づくりに繋がることを知りました。
♡ カートリッジ 一筋に掛ける 男の浪漫 ♡