金曜日に、三井住友銀行の個人営業部担当の方とその上司が来られました。
紀伊国屋書店で、今買って来られたばかりという感じの本を1冊手みやげにして。「おおきな木」という絵本でした。
その意図は?と尋ねると、
「まあ、読んでみてください。人それぞれに受け取り方が違うと思うんですが・・・
それはそれで面白いものがありますし、この時代に何か一石を投じるものがあると思いますので・・・」
と、おっしゃっていました。
ここのところの世界不況の影響により、人員削減で、派遣労働者の方が解雇されて、集団で抗議されている光景を、よくニュースで見かけます。
「その件に関しては、どう思われますか?」
と、三井住友銀行の方に尋ねられました。
私としては、人材派遣労働者は「キリギリス」、正社員は「アリ」だと思っています。
キリギリスは、冬の時代がやってくることを全く考えもしないで、春や夏を楽しく過ごしてきたのです。実りの秋がやってきたら、当然冬も訪れます。
アリさんは、冬のために必死で貯えしてきたのですから、冬を難なく乗り越えることができるはずです。多少の辛抱は必要ですが、やがてやって来る春を待つことは容易いことです。
キリギリスさん達を生んだ社会的・政治的背景にも、問題があります。
人材派遣は、本来は企業にとって、都合のいい時に、都合のいい人数・人材をすぐに確保できるというメリットを利用しただけです。
人材派遣に登録されている方の一部は、自分達が「適材適所」という言葉に惑わされて、自分達の本来あるべき姿や仕事を見失ってしまっています。
自分達は、もっと大切な未来に向かって、羽ばたいていくべきなのに、今が良ければそれでいいという近未来しか考えないような気がします。
人生というのは、振りかえってみれば短いですが、歩んでいる途中、苦しい時や辛い時は暗く長く感じます。しかし、その辛い・しんどい時をたくさん乗り越えることで、試行錯誤を繰り返して、新しい発見や気づき、楽しい成功体験が生まれてきます。
「おおきな木」という本は、私にとっては「母なる木」と感じました。
男の人は「父なる木」と感じるのでしょうか?
子を思う親の心は、無償の愛です。「子供が幸せになってくれるなら・・・」と、子供中心に考えます。「自分のため??」も、確かにあるかもしれませんが、子供が不幸になることは、自分にとっても最大の不幸です。見ているだけでも辛いものです。
いつも笑っていてほしい、いつも楽しく過ごしてほしいと思う親心。
「おおきな木」は「無償の愛」です。
これは、親でなくても、誰であっても良いと思います。親になった経験のない若い世代には、おおきな木によじ登る「子供」の立場からみて、今、自分がどうしたらいいのかを考えることができるでしょう。
ほんとうに、このままでいいのか?!
キリギリスさん達は、究極的に自分のことしか考えていないと思います。とりあえず、自分が一番楽な方向性を見出してきたのです。人生は、辛いものです。でも、いろんなことを積み重ねることで、山登りと同じに、乗り越えていくことが楽しくなります。
では、せっせと働くアリさんは、何も考えていないでしょうか?
いえ、自分の将来への貯えも、自分達の子孫の繁栄も、常に考えていると思います。
遠い先を見続けながら、毎日を過ごすのです。そして、たくさんの仲間と常に情報交換をし合っています。自分の位置をちゃんと心得ています。小さなアリさんに学ぶことはいっぱいです。
どうか、キリギリスさん!!
今からでも遅くはないんです。政治や社会に抗議するよりも、小さな親切、小さな奉仕から始めてみてください。その中から、ヒントや情報が見つかると思います。
キリキリ舞いのキリギリスさん、生活が「ギリギリッす?!」と言うだけですか???
あなたには、バイオリン弾きという特殊な技能があることを忘れていませんか?
おおきな木は、どこかであなたを見守っていてくれますよ。
素敵な音色を、おおきな木に、そして、たくさんの人々に、聴かせてあげてくださいね。