本日初診の口臭外来の患者様。(20代女性)
中学生の頃から、口の中が気持ち悪い感じがあり、人が鼻に手をやる「しぐさ」を見て、自分に口臭があるのではないかと悩み出した。人に「臭う」とか「くさい」とか言われたわけではないが、舌の側面がピリピリしたり、ネバネバしたりする感じがあったため、自分自身ではよくわからないけれども、ずっと口臭があると思い続けてきた。
見た目はそんなに暗い感じの方ではなかったけれど、人と話すときはやはり気を遣うし、積極的に行動できず消極的になり、内向的になってしまうということだった。
5年前に、某国立病院の口臭外来で治療を受けたことがあるが、歯周疾患の治療であり、口臭測定に関しては、ビニール袋に息を吹き入れてそれを器械で測定されただけであった。そして、歯茎の検査をしたが、歯周病は大丈夫ということで、歯磨きの方法を指導してもらった。2回ほど行ったけれど、少しも口の中の状態が変わることもなく、口臭がなくなったとはとても思えなかった。
それからずっと気にはなっていたが、ただ普通に、歯科に虫歯の治療で通うだけで、以後口臭について相談することもなく、今になってしまった。
仕事を休職している間に、徹底的に調べてもらい、治したいと思って当院に来られたということです。
実際に生活調査票の1週間の食事のメニューをみると、パン食が多く、昼食がお菓子であったり、夜だけまともな食事という感じを受けました。尋ねてみると、米飯は一切食べないとのこと。昔から「ごはん」を食べるのがあまり好きでない。(なぜかわからないけれど)
それに、あまり噛まなくても良い食事や、野菜ジュースや乳製品が多くみられました。
「噛む」という行為が、あまりされておらず、ご本人にも
「噛んでませんねェ」
と、言ったら
「そうですね。噛むという概念があんまり頭になかったんです。」
実際の検査結果は、やはり噛んでいないため唾液分泌が非常に悪く、お口の中がいつも乾燥している状態、つまり「ドライマウス」の症状でした。
噛む行動をしていないし、また、口臭の不安があるため、人前であまり話をしないので顎の筋肉を使っておらず、頬や口のまわりの筋肉がこわばっていて、舌の機能も低下しており、口の周りが老人のようになっているという説明をしました。
更に、水も1日にコップ3杯程度しか飲んでいないので、水分代謝がうまくいかず、唾液分泌が悪くなっているということも、理解していただきました。
ご本人はすごく納得されて、今日から早速に食生活を改善するとおっしゃっていました。(良かった!!)
舌のピリピリ感は、更年期の女性に多く、「舌痛症」と呼ばれます。ホルモン分泌が弱まり、ストレスがかかり、不安感がつのることで、唾液分泌が少なくなりドライマウス状態となって発病することが多いようです。
今回の患者様も、年が若いのに、食生活の面で特に噛まなくても良い食事をされており、また、生きるうえで大切な「水」を摂取することを忘れているために起こった症状です。
ほんとに今の若者たちが、「歩く」ことや、「体を動かす」ことを忘れてしまっており、「食」も「楽」(ぐうたら)をする傾向にあります。
人間の体は使ってこそ丈夫で健康になり、「働く」ことで、人に様々なものが還元できて身も心も充実していき、「楽しい」「しあわせ」という感覚になると思います。
そして、頭もフル回転することで脳がいつも活性化し、新しい発想や発見が生まれ、年をとっても老人ボケにならずに済みます。
お金儲けも、頭脳を使わないとできませんものね(笑)。