株式会社ユンブルの下関さんに8月に電話取材を受けました。若い方を対象に、虫歯以外のお口のトラブルについて、日々の診療で比較的多いものを挙げさせていただきました。皆さんのお悩みの参考になればいいなと思っております。これ以外は、また掲示板にでもご質問入れてくださいね。22日に「コブス横丁」に配信されています。
歯科医に聞く。虫歯だけじゃない!
気をつけたい歯のトラブルとは?
親知らず、歯ぎしり、歯ぐきから血が出た……など、虫歯以外でも何かと多い歯のトラブル。気にはなりつつも、ついつい放置していませんか。
そこで、歯学博士で専門は口腔(こうくう)衛生である江上歯科(大阪市北区)院長の江上一郎先生に、虫歯以外の歯のトラブルとそのケアや予防についてお話をうかがいました。
■ストレスが原因で歯ぐきに炎症が起こる
まず、20代、30代に多い悩みが「親知らず」。
江上先生は、次のように話します。
「前歯から奥に数えて8番目の歯である智歯(ちし)、いわゆる親知らずは、早い人では15歳くらい、遅い人では40歳くらいに生えてきます。親知らずは4本全部ある人や、上下どちらかがない人、全くない人もいます。
昔の人は玄米など固いものを噛(か)んで、あごの骨がしっかりと発達していたので、大人になって親知らずが生えてきても、きちんとゆがまないで生えるスペースがありました。
ところが現代人は、子どものころに固いものをあまり食べなくなり、あごが小さいまま大人になってしまい、親知らずが生える場所がないパターンが増えています。
そのため、親知らずが途中で埋まっていたり、水平埋伏智歯(すいへいまいふくちし)といって、横に倒れてしまい、手前の歯を押して歯並びが悪くなってしまったりする場合があります。
また、倒れた歯の下にすき間ができることで歯垢(しこう)がたまり、虫歯にもなりやすくなります。」
さらに、江上先生は、
「最近、30代のビジネスパーソンに増えている症状として、
急性の潰瘍性歯肉炎(かいようせいしにくえん)があげられます。だ液は、口の中を洗浄したり微生物の繁殖を抑えたりする役目があります。ところが、ストレスや疲れがたまると体の免疫力が落ち、ホルモンのバランスが崩れ、だ液の量が少なくなります。すると、歯肉上皮の抵抗力が弱まって感染を起こし、潰瘍を発症することがあります。
潰瘍性歯肉炎は、歯ぐき全体が急激に痛くなり何も食べられなくなるので、歯槽膿漏(しそうのうろう)と勘違いされてクリニックにかけ込む方がいらっしゃいます。」
続けて、
「ほかにも虫歯と勘違いしやすい病気として、上顎洞炎(じょうがくどうえん)があります。これは、風邪、アレルギー性鼻炎や花粉症が原因で、鼻の奥の副鼻腔(ふくびくう)に炎症が起きるものです。
この上顎洞炎にかかると、上の奥歯3本あたりが、虫歯のような痛みを持ちます。鼻をかんだとき、うつむいたとき、首の後ろをトントンたたいたときなどに歯に痛みが走るようであれば、上顎洞炎の疑いがあります。」
■歯ぎしりが原因で顎関節症に
また、時々、タレントや歌手が「顎関節症(がくかんせつしょう)で入院した」という話題を耳にしますが、この「顎関節症」は「歯ぎしりが原因になっている場合がある」と江上先生は話します。
「ストレスが溜まると、寝ている間に無意識に脳がストレスを解消させようと、歯ぎしりを起こす場合があります。
歯ぎしりには3つのパターンがあます。一つは歯をギリギリとこすり合わせる『グラインディング』。もう一つは歯を5分や10分といった長い時間グーッと強く押し当てる『クレンチング(食いしばり)』。最後の一つはカンカンカンと音を鳴らす『タッピング』です。
これらは、あごの関節に無理な負担がかかり、顎関節症を引き起こします。一人暮らしの方は、自分が歯ぎしりをしているかどうか自分では分からないでしょうから、歯医者さんに行ったときに、歯が摩耗(まもう)していないかをチェックしてもらうとよいでしょう。
また、舌の周囲にデコボコと歯の型(圧痕・あつこん)が付いている場合は、舌を強く歯に押し付けているためで、歯ぎしり(クレンチング)の証しになります。」
最近、江上先生が気になる病気としては、
「若年性の歯周炎です。私が担当している小学校の定期健診では、5年ほど前から虫歯だけでなく、歯の汚れ、歯肉炎や顎関節症のチェックをするようになりました。
昔はスルメや昆布など、よくかむおやつを食べていました。かむことで、歯の表面の汚れが取れるという自浄(じじょう)作用があります。
しかし、スナック菓子のように粉末にしてから成型したものは、口の中でだ液と混ざって歯の表面に付着します。そのまま放っておくと歯垢となり、歯周炎を起こし、ひどくなると膿(うみ)を持って歯槽膿漏にまで発展します。」
小学生ではなく、会社の引き出しにスナック菓子を常備している大人も要注意というわけです。
しかし、「これらの予防には、ガムが効果的です。」と江上先生。
「ガムをかむことで歯の表面もきれいになり、口の周りの筋肉が発達し、だ液も出やすくなります。」と説明します。
どうやら歯のトラブルは、多種にわたって存在するようです。虫歯さえ気を付けていれば大丈夫、というわけではないのです。
まずは、デスク脇にある常備菓子のスナックをガムに替えることから始めたいと思います。
監修:江上一郎氏。歯学博士。専門は口腔(こうくう)衛生。口腔外科を併せ持つ江上歯科(大阪市北区中津)院長。
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