舌に口内炎や舌がんなどの病変がないにもかかわらず、舌の先端部や側縁にピリピリ、ヒリヒリと火傷をしたような痛みのある「舌痛症」が増えています。しかし、いまだ決まった治療法はありません。鎮痛剤、軟こう、ビタミン剤なども効果がなく、医師らから「もう来なくてよい」「気のせいだ」などといわれ、患者は医院を転々とし、「舌がんでは?」との不安も募り、大学病院を訪れるケースも増えてきたているそうです。
名古屋市立大学病院歯科口腔外科の横井基夫部長はこの状況にいち早く注目されました。1996年から専門の舌痛症外来を開設し、2005年までに千人を超す患者を診察していらっしゃいます。
男女比は1対4と女性が多いようです。年齢は40歳代から70歳代に多く、男女とも60代がトップ。横井部長によると、これまでの研究結果から
- 何かに集中している時は痛みを忘れている
- 食事中は痛くない
- 起床時にも痛みがない
- ストレスとの関係がある
という共通した特徴のあることが分かってきたそうです。
同科での治療法は
- よく診察したうえ、舌がんなどの心配する病変がないことを説明する
- 通常、舌に病変があれば食事中、また何をしていても痛いはずのところが、逆に痛くないのがおかしいということに気づかせる
- 日常生活で楽しい時や、嫌なことがあった時などに痛みを感じるかどうかを患者自身に観察してもらう。ストレスとの関係が分れば、舌痛を肩こりと同様に考え、ストレスのバロメーターとしてうまく付き合う
- 最初から投薬は行わず、患者の不安を取り除くために定期的に診察していく
などが重要としており、現在、治療のガイドライン作りに取り組んでおられます。
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