30年程前のこと、「リンゴをかじると歯ぐきから血が出ませんか」というCMが話題になったことがあります。「歯槽膿漏(しそうのうろう)にならないよう、しっかり歯を磨きましょう」といった内容でした。
「歯槽膿漏」は歯ぐきから膿の出る病気という意味ですが、他にもさまざまな症状があることから、いまでは「歯周病」と呼ぶようになっています。
若い人などは、「歯周病?オヤジの病気でしょう?」と思うかもしれません。ところが、それは大きな間違い。
早い人では、10代からこの病気にかかり始める場合もあるのです。もちろん、人それぞれのかかりやすさの因子が違うのでいちがいにはいえませんが、20代から40代にかけて自分でも気づかないうちに歯周病にかかっていて、これまた知らないうちに悪化している、という場合が多いのです。
歯周病はかかっていることに気づきにくいことが災いして放置されます。すると歯を支える組織が長期間にわたって破壊され失われていき、歯ぐきが変形し、歯の位置が動き、歯ぐきが痛んだり歯がぐらぐらするようになって初めて「歯周病」といわれ驚いてしまいます。
たいがいの人はこのような状態になってから慌てて治療を始めるのですが、家に例えてみるとこんなふうになります。
家の土台が長年のうちにしだいに崩れていき、近くを車が通ったり風がふいたりするとグラグラする。さらには、家そのものが傾きはじめた。そこまでいってしまってからようやっと重い腰を上げ、修理にとりかかろうとするようなものなのです。
あなたもかかっている?
55〜64歳の半数が進行した歯周病!
歯周病は、歯と歯ぐきの間の溝(歯肉溝(しにくこう))に微生物のかたまりである歯垢(しこう:プラーク)がたまり、歯ぐきに歯周病菌が繁殖して炎症が起こることから始まります。歯ぐきが炎症で腫れると歯肉溝がポケット状に深くなっていきます(歯肉ポケット)。この歯肉ポケット内にたまったプラークによってさらに歯周病の進行に拍車がかかります。そして、より深くなったポケット(歯周ポケット)を中心にして炎症が広がり、ついには歯を支える土台である骨(歯槽骨(しそうこつ))などが破壊されてしまうのです。
歯周病は歯肉炎と歯周炎に分けられます。平成17年度の歯科疾患実態調査によれば、歯周病の進行した症状である歯周炎には、すでに15〜24歳で20パーセントの人がかかっています。
歯周炎はその後増え続け、55歳〜64歳では50パーセント近くになります。65歳以降になると歯周炎にかかっている人が減りますが、それは歯周炎によってすでに歯が抜け落ちてしまった人が増えるからなのです。
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