2003年10月号

バイオフィルムとは?~唾液を無効化してしまいます~

歯の表面は常に唾液で覆われています。そして唾液が歯の表面のエナメル質にふれているかぎりむし歯にはなりません。唾液にはさまざまな作用がありますが、そのひとつが清浄作用です。クチの中の細菌や食べ物のカスを洗い流してくれるのです。ところがミュータンス菌がクチの中にいると、砂糖という”エサ”を得て、唾液をさえぎる膜のようなものを歯の表面に作ってしまいます。そのため、唾液の働きが行き届かなくなり、虫歯が作られていくのです。

ミュータンス菌とバイオフィルム

ミュータンス菌イメージ

ミュータンス菌が分泌するグルコシルトランスフェラーゼ(GTF)という酵素が、砂糖をネバネバした”グルカン”という多糖体に変え、歯の表面にぺったり張り付きます。歯の表面はエナメル質の名のとおりツルツルしているように思われますが、本当は表面に細かく溝があってザラザラしています、そのデコボコ面にグルカンはしっかり入り込んで、張り付いてしまいます。しかも水には溶けません。その中でミュータンス菌は生き続けます。そして、しだいに歯の表面に分厚い膜を作っていきます。この膜をバイオフィルムと言います。

歯の表面にバイオフィルムができてしまうと、歯のエナメル質が唾液にふれることができなくなり、唾液による清浄作用がきかなくなります。そのためバイオフィルムで守られた内側は細菌が繁殖しやすい環境になります。

バイオフィルムを取り除かないと・・

バイオフィルムイメージ

ミュータンス菌はバイオフィルムの中で食べ物などから糖分を吸収して、自分が生きていくためのエネルギーを作り出します。この過程を”発酵”といい、糖は最終的に乳酸や酢酸・エタノールにまで分解され、外に放出されます。ところがバイオフィルムが育ってくると、できた酸(最も多いのは乳酸)は外に放出されずにバイオフィルムの中に残り、歯のエナメル質を溶かし始めます。歯みがきなどによって早くバイオフィルム取り除くことができれば、傷ついたエナメル質を再び石灰化して修復することができるのですが、酸性状態が続くとエナメル質の破壊は進行し、むし歯へと向かっていきます。

エナメル質の破壊は狭い範囲で深く進みますが、比較的柔らかくおかされやすい象牙質にまで達すると奥に広い穴が作られるようになります。こうしてむし歯の穴が大きくなると、熱いもの・冷たいもの・甘いもの・すっぱいものの刺激によって歯髄(歯の中心にあって神経の集まっている部分)が充血し痛みを伴なうようになります。たいていの人が「そろそろ歯医者さんにいかないと!!」と考えるころです。
  口内炎の発症は、体調とも大きく関係しています。夜更かし・飲みすぎ・ファーストフード中心の食事といった生活は、まさに口内炎の素地を作っているようなものなのです。口内炎は、規則正しい生活習慣を身につけて”予防”することを心がけましょう!

歯髄炎にも・・

さらに象牙質にある象牙細管を通って、歯髄に細菌が感染し、炎症を起こすと歯髄炎になります。この段階になると、今まで一時的に歯がしみたり、食べ物がはさまると痛みを感じていたのが。突如猛烈に痛み出し、周りの歯がすべて悪くなったように感じられます。
1度でもこういう経験をした人は、もう2度とごめんだと思うようです。

院長

院長から一言

歯と歯グキのすき間の、歯ブラシの入りにくいところに歯周病の原因となる、バイオフィルムが存在します。歯間ブラシやつまようじ法(V7歯ブラシやシステムブラシ)によって、このすき間を清掃し、バイオフィルムを一掃しましょう。
 また、歯グキのマッサージにより血行をよくして歯グキをひきしめ、歯周病菌に対する抵抗力をつけましょう。その上で、除菌効果のあるマウスウォッシュ等を使用すれば、より効果的です。

  • 歯みがきは、毎食後3分以内に特に就寝前は10分くらいかけて念入りに!
  • 歯ブラシは清掃効果が減少しないよう、1ヶ月に1本の割合で、新しいものと交換して使用してください。