2006年9月号
子供の歯を守ろう!
●ミュータンス菌はどこからくるのか?
まず「細菌」について説明しておきましょう。口の中にはたくさんの細菌が生息しています。その中にむし歯の原因となる「う蝕病原菌」とよばれる細菌があり、特にその中でも重要なのがストレプトコッカス・ミュータンス菌なのです。ところで生まれたばかりの子供の口の中にミュータンス菌はいるのでしょうか?答えはノーです。ミュータンス菌が口の中で検出されるのは乳歯が生える前後、つまり生後6か月あたりで、小学生になればほとんどの子はミュータンス菌をもっているといわれています。「ほとんど」ということはもっていない子もいるのですね。
●ミュータンス菌は誰かからうつる!
そう、ミュータンス菌は誰かから「うつる」のです。犯人は誰か?たいていの場合それは母親です。「口移し」あるいはスプーン等を介してミュータンス菌は母親の口から子供の口にうつります。大きな鍵を握るのはミュータンス菌がどのくらい量を占めているかだといわれています。母親の口の中にミュータンス菌が多くある場合は、子供はミュータンス菌に強く感染して、むし歯になりやすい状態になってしますのです。こういうと「口移し」なんかしてはいけないのだ、と考えてしまう方もいるかもしれませんが、そういう意味ではありません。「母親の唾液中ミュータンス連鎖球菌量がコントロールされている場合はむしろスプーンを介した食事のやりとりなど、緊密な母子間のスキンシップにより、母親の健全な口腔常在菌がその子供に早期に定着することは好ましいことである」といわれています。
●砂糖は悪者なのか?
砂糖に話題を移しましょう。とかく砂糖はむし歯の「原因」として悪者扱いされていますが、歯の上に砂糖をのっけておいても歯に穴はあきません。ミュータンス菌は砂糖から、糊のように粘着性のタカイ物質(グルカン)を作り、歯にくっつくことと、酸を産出するという二つの点でむし歯の敵とされているわけですが、「大量の砂糖がなければ病原性は示さない」といわれています。
そう、いけないのは「たくさんの砂糖」なのです。「食べすぎてはいけない」ということです。ミュータンス菌が悪さをしない程度なら大丈夫なのだと言い換えることもできます。問題は「程度」です。
●「必要量」ではなく「限度量」
砂糖は食べないと死んでしまうという必須栄養素ではないので、「必要量」というものはありません。これ以上食べすぎると体によくない、という「限度量」があるのです。
ですから子供さんが口にしやすい食品に入っている砂糖の量を知っておくことは、むし歯予防の大切な知恵といえます。一般的に、清涼飲料水の缶1本分、ケーキ1個、アイスクリームカップには20~30グラムの砂糖が入っています。大人でも50グラム以上は危険といわれているのですから、子供はそれよりもっと「限度量」は少ないはずです。3度3度の食事に含まれている砂糖の量も計算に入れると、毎日清涼飲料水やケーキを食べるのはよくありません。
むし歯になってしまったら、「身体もあぶない!」という警告だと考えていただきたのです。私たちの最終目標は「むし歯がないこと」ではなく、「心身ともに健康であること」なのですから。