2010年5月号
思春期性歯肉炎
歯みがきをすると、時々歯ぐきに血がにじむ人は少なくないと思いますが、何かしら不安を感じるものです。
子どもの歯肉の状態の調査では、5~14歳の子どもの19%に歯肉の炎症症状があり、約17%に歯石があったと報告されています。
学童期・思春期に歯肉が一時的にはれたり、少しの刺激で歯肉からの出血があったりする症状はほとんどの場合、思春期性歯肉炎と考えられます。
歯肉炎の主な原因は細菌の集まりである歯垢(プラーク)の蓄積ですが、思春期にはホルモンの分泌が増え、特に女性ホルモンは歯肉の炎症を助長したり、ある種の歯周病原因菌の増殖を助けたりするといわれています。
しかし、思春期性歯肉炎は男子にも多くあるので、この時期に歯垢が蓄積する生活環境が問題になります。
思春期の子どもはクラブや塾で忙しく、歯垢を形成しやすいファストフードや菓子類を食べる機会も多いようです。
昼間は歯みがきをする機会も少なく、家庭での口腔清掃もこの時期には本人に任せられているでしょうから、専門的な指導を受けていないと、おろそかになる傾向にあります。
歯肉炎と口臭の関係ですが、生理的口臭(誰にでもある起床時、空腹時等に一時的に強くなる口臭)を除いて病的な口臭の約80%以上は口の中に原因があり、そのほとんどが歯周病といわれています。歯みがきが不十分で歯垢が残っている状態が長く続くと、歯と歯ぐきのすき間(歯周ポケット)が深くなり、酸素のない歯垢の深い部分に嫌気性菌(いわゆる歯周病の原因菌)が増え、その菌が破壊された組織や血球成分などのたんぱく質を分解し、臭気成分を作り出すからです。
学童期・思春期の歯肉炎は、学校検診で軽度のものをGO、歯石がたまっていたり、歯肉炎がすすんでいたりするものをGと診断しますが、口腔の清潔が保たれ、歯石をとれば、ほとんどの場合問題なく健康な状態を回復しますので、気になる症状がありましたら、ご相談ください。