2009年10月号
痛くない歯科治療って?
むし歯になると
私たちの歯の表面では、口の中の環境が良い状態であっても、「脱灰」と「再石灰化」という現象が毎日繰り返されています。
「脱灰」とは、むし歯の原因となる細菌が砂糖などから酸を作り、歯を溶かす現象です。一方「再石灰化」とは、唾液の中のカルシウムやリンなどが歯に取り込まれて、溶かされてしまった歯を元に戻そうとする現象です。この二つの現象は目で確認することはできませんが、口の中では常に起こっているものです。
もし、二つの現象のバランスが崩れて、一方的に歯が溶かされてしまうと、歯の表面に白い斑点ができます。まだこの状態では歯の成分は破壊されていませんので、元の状態に回復できます。たとえば、歯の成分を補う効果があるフッ化物を塗ったり、フッ化物で食後に口をゆすいだり、フッ化物の入っている歯磨剤を使って歯磨きをしたりします。あるいは、再石灰化を促す成分を添加したガムを噛むことも効果的です。
このような努力をせずに放っておくと、歯に穴が空く状態に進行してしまいます。ここまで進行したむし歯は、悪い部分を削り取り、その部分を人工物で置き換える必要があります。また、むし歯を削る場合も、表面に使い部分だけであれば、ほとんど痛みを感じることはありませんが、中まで進行したむし歯の場合は治療時に痛みを感じやすくなり、その痛みを取り除くために麻酔を必要とすることも多くなります。
新しい材料:コンポジットレジン
むし歯を治療するために金属のざいりょうを選択することが多かった時代では、歯を大きく削る必要がありました。しかし、現在では、歯と同じ色の材料の開発が進み、それを使用する場合が多くなっています。コンポジットレジンという硬いプラスチック材料もその一つです。この材料は歯と同じような性質をもち、専用の接着剤を使ってはと強く接着する能力をもっています。コンポジットレジンが歯と強く接着してくれるので、歯を小さく削るだけですむようになりました。治療するときの痛みも少なく、また、治療された歯が長い間、口の中で役割を果たせるようになりました。さらに、歯を削る量が少なくなるということは、あの「キーン」という音を聞く時間も短くなるということです。
このように材料の進歩によって、痛みや不快な音から解放されて、快適なむし歯治療を受けることができるようになってきました。
新しいむし歯治療法
むし歯の部分を取り除く技術も新しくなってきました。その一つにレーザーを使った治療法があります。歯科用レーザーは、むし歯の予防、知覚過敏の治療や歯を白くする際などに使われています。これ以外にも、細かい粉末を圧縮した空気で噴射して歯を削る装置や、超音波の振動を応用した器具も使われています。
また、最近になって、むし歯の部分のみを溶かす薬が日本でも認可されました。この薬は専用の器具を使ってむし歯部分に垂らし、悪くなった部分だけをゆっくりと溶かしながら軟らかくして取り除くというものです。
これらの新しい方法は、痛みを感じることが少なく、ほとんど麻酔を必要としません。また、今までのような歯を削る器具を使用しないため、不快な音もなく、これまで歯科治療に対して恐怖心をもっていた患者さんにとっては、待ちわびた朗報と言えるのではないでしょうか。
歯科治療の技術は大きく進歩しています。ぜひ、痛みの少ない、そして快適な治療を受けに歯科医院を訪れてみてください。
もちろん、むし歯にしない予防が最も大切だということは、言うまでもありません。