2004年7月号
詰めるか、かぶせるか ~とにかく相談を!
詰める と かぶせる
例えば、神経除去と根管治療のケースで、上下がかみ合う面に深く大きな穴があいているとします。この仕上げの修復は・・・?となると、「詰める」か「かぶせる」かしかないわけです!
修復は本来歯科医師まかせです。歯科医修行の大きな部分だし、方式もすごくたくさんあります。患者さん側の見当外れの願望は、ときに歯の長持ちに不利になります。でも根管治療後の修復は、歯科医師にも異見が多いものなので、患者さん側も知っておいた方がいいと思います。
神経を抜かない虫歯なら、削った部分にプラスティックを埋めるか、穴の型に鋳込んだインレーをはめ込みます。「詰める」とか「詰め物」と言われる修復ですね。ですが、神経を失い根管治療を施すと、歯の中心部が縦に大きな空洞になり、歯がもろくなります。そこで強度を保つため、鋳造して作る冠(クラウン)を歯全体にかぶせるのが原則になります。ところが、この冠には欠点があります。冠をかぶせた歯を元の歯と同寸法におさめるため、鋳造する冠の厚みだけあらかじめ歯の表面をぐるりと削ります。このため、表面を覆っている虫歯防御の主役のエナメル質が削り取られ、虫歯の危険が増してしまうのです。また、根元までかぶせると、歯周病(歯槽膿漏)の歯磨きにも不利になります。
詰め物は自費治療に
本当は、しっかりとした歯なら「つめもの」でも長持ちするので「なるべく詰め物で」と考える歯科医師も増えました。でも「根管治療=かぶせる」という基本しか教えない歯科大学もあるそうです。根管治療の修復で、詰めることはまったく考えなかった、と話す歯科医師もいるぐらいです。
もっとも「詰めてほしい」となると、実際には工夫がいることも多いのです。必要な歯面だけ冠タイプにして他の面は詰めたり、可能な限り浅く小さくかぶせて、根元は天然の歯を残したり、という方法もあります。しかし、これらは自費治療になってしまいますので、患者さんとの話し合いが重要です。
詰める と かぶせる
また、神経を抜いて弱くなった歯がどんな修復なら長持ちするか、判断は非常に難しいものになります。さらに、慣れないと失敗が多いから、自分の歯科医師が最適な技法を習得しているかが大きなポイントになります。つまり、「腕のよい歯科医師にかかっており、なおかつ素直に相談できる間柄でないと実際の改善は望めない」ということになります。歯科医師側も、「歯の長持ちに熱心」「歯周病に詳しい」など、いろいろな治療方針をもって治療にあたっていますが、実際の治療技術の腕とは必ずしも一致しないケースがあります。まずは、きちんと話し合いに応じてくれる歯科医師にざっくばらんに相談してみることが大事と言えます。