2009年2月号
口の中の癌(その症状・治療)
~口内炎と間違えやすい~
いきなりショッキングな話で恐縮ですが、口の中にも身体のほかの部分と同じように癌ができることをご存知ですか。
日本人の癌による死亡率は心臓疾患、脳血管疾患を超えて第一位で年々増加しています。
口腔癌(口の中にできる癌)は胃癌や肺癌に比べて発生率は低く、癌全体の1~2%です。癌は悪性のデキモノですが、身体の表面や口の中などの、体腔の内面をおおう表皮やそれから分化したものからできるものを癌腫、上皮以外の組織(筋肉や骨など)からできるものを肉腫とよびます。
一般に癌とは、この両者の総称と考えてよいと思います。口腔癌は、癌の種類としては癌腫が大部分で、肉腫は全体の6%程度です。
口腔癌の初期の症状は、粘膜のただれや不整形(周りの健全な組織との境界がはっきりしない)の腫瘤(こぶ、はれもの)として現れます。
表面の色調は赤みを帯びたり、白色であったり、赤みを帯びる中に白色の部分が混じったりします。
ただの口内炎と思って見過ごしやすいので注意が必要です。
口腔癌の発生しやすいところは、舌、歯肉、口腔底、頬部、粘膜の順です。もっとも発生頻度の高い舌癌のできやすいところは舌縁(舌の横、周囲)で、大臼歯に触れる部分です。ちょうど虫歯でかけた歯や、合わなくなった義歯によって、圧迫されるなどの刺激を受けやすいところです。
だから一般的には、むし歯や義歯が当たって傷がついたり、誤って舌を噛んだために病変が起こったものと勘違いしてしまい、いずれ治るものと考えて放置してしまうことがあります。
舌癌に続いて発生頻度が高い歯肉癌は、大臼歯の歯肉にできやすく、上顎に比べて下顎によくみられます。
進行すると癌が顎骨にまで達してしまい、骨を破壊していきます。そうなると歯がグラグラしたり義歯が合わなくなったりすることがあります。
これらの口腔癌も、身体のほかの部分の癌と同じように、早期発見により完全に治癒することができます。