2012年6月号

ストレスと歯科における心身症

ストレスにおける心身症

最近よく言われる「心身症」とはどのような病気でしょうか。

心身症とは体の症状を主としていますが、その診断や治療に、心理的な因子についての配慮がとくに重要な意味をもつ病気のことです。また身体的な原因で起こった病気でも、その経過に心理的な因子が関係している場合や、一般に神経症とされている病気でも身体の症状を主とする場合は広い意味で心身症として取り扱っています。
たとえば、胃潰瘍や自律神経失調症などがよく知られています。

心身症はストレスとおおいに関係があります。

現代社会におけるストレスが原因で、歯科の領域でもこの心身症といわれる病気が最近増えてきました。
口腔は情緒の影響にとくに敏感で、ストレスへの反応も過敏です。歯科領域の心身症としては、口臭症(自臭症)、舌痛症、顎関節症、開口障害、口腔乾燥症、口腔内異常感症、顔面不定疼痛(とうつう)症、歯科治療恐怖症、味覚異常症(異味症)、義歯不適応症、義歯ノイローゼなどという病気があります。
たとえば、口臭を指摘されたのち、電車の中で近くにいる人が手を口元へもっていくのをみて自分に口臭があると思い込み、歯科のほか内科や耳鼻科を受診してもなんの異常もなかったという例や、家族問題で悩んでいた主婦が歯の治療をきっかけに、甲状腺障害として現れていた心身症が顎関節症に転移した例などがあります。

現代社会に生きる私たちの日常生活は、常に適応することが求められており、すべての人が多かれ少なかれ常にストレスのもとにおかれています。しかし同じ環境にあっても、ある人は心身症になるのに、ある人は健康でいられるのは、その環境に十分適応できずにそれを有害なものとして受けとめた人だけが、意識するしないは別として自律神経や内分泌系の異常反応を起こして症状が現れるということなのです。つまりストレスの原因としては、その人を取り巻く刺激の種類、程度、期間などもおおいに関係しますjが、それよりも刺激に対するその人の受けとめ方(性格)がより強く関係するというわけです。

心身症は、子どもからお年寄りまで、高度文明社会の中でますます増えつつある病気です。

昔から「病は気から」といわれますが、これからはお口や身体の健康はもちろん心の健康にも気を配りたいものですね。