2020年12月号

誤嚥死を招く「危ない水分補給」

“冷えたペットボトルからゴクゴク”とやっていませんか?

誤嚥(ごえん)は、年齢とともに物を飲み込む喉の機能が衰えることで起こります。誤嚥すると食べ物や飲み物と一緒に口の中の雑菌が肺に入り、誤嚥性肺炎を引き起こすこともあります。誤嚥した時に気管から異物を吐き出そうとして嘔吐することも珍しくなく、この時、吐しゃ物が肺に入ることで窒息のリスクも高まります。現在、65歳以上の高齢者の死因の第4位は肺炎で、うち7割が誤嚥性肺炎と言われています。

誤嚥は食べ物よりも「飲み物」で起こりやすく、固形物に比べてスルスルと喉を通るうえ嚥下中に小さなしずくとなるので、気管に入りやすいのです。一番誤嚥しやすいのが冷たい水。一気に飲めてしまうからです。
では安全に水を飲むためには、どんな点に注意すればいいのでしょうか。一番やってはいけないのが、ペットボトルのラッパ飲みです。上を向いて水を一気に飲もうとすると、嚥下処理能力を超えてしまい、気管に入りやすくなります。コップに入れて少量を口に含み、軽くお辞儀をするように下を向き、一口ずつ飲み込むようにしましょう。背筋を伸ばすのもポイントです。

いざ誤嚥してしまった時、重症化しないよう、日頃から「口内環境」を整えることも重要です。老化とともに口内環境は悪化し、だ液にも細菌が混じりやすくなります。そこで重要になってくるのが、日頃の『歯磨き』です。一日3回、毎食後の歯磨きはもちろん、入れ歯も清潔に保つ手入れが必要です。口内細菌のなかでも歯周病菌はとくに危険性が高く、誤嚥時の重症化リスクを上げます。かかりつけ歯科医で歯周病菌を除去しておきましょう。

今日から始められる誤嚥予防トレーニング

シャキア・トレーニング

シャキア・トレーニング アメリカのシャキア医師が考案し、国際的にも認められた運動。マットなどに枕なしで仰向けになり、頭だけをゆっくり持ち上げて自分のつま先を見る。ここで30秒〜1分間停止し、頭をゆっくり下ろす。これを5回から10回繰り返す。

喉E体操

歯を食いしばり、「イー」と発声する。喉仏を意識しながら5〜10回行う。

ペットボトルふくらまし

500mlの軟らかいペットボトルを思いっきり吸って凹ませる。その後、息を吐いてまた膨らませる。これを1日5回繰り返す。

喉仏スクワット

喉仏は高い声を出せば上がり、低い声では下がる。これを繰り返すことで喉の筋肉を鍛える。「アイウエオ」のアイエを高く、ウオを低く発音する。