2021年8月号

「唾液力」を高めて健康な口腔環境に!〜初期の虫歯対策効果も!〜

「天然の万能薬」とも言われる健康維持に欠かせない「唾液」

唾液の働き
普段暮らしている中で、気にすることは少ない唾液。実は唾液は口だけでなく、全身に対してさまざまなよい働きがあることをご存知でしょうか。具体的には、口の中に菌やウイルスが侵入してくるのを防いだり、虫歯のごく初期であれば、唾液の力で自然に元の状態に戻してくれる働きをしています。さらに、食べ物をやわらかくして消化を助ける働きや、「体のサビ」と呼ばれる活性酸素を減少させる働きもしています。適切な唾液力があれば、上記のような働きがスムーズに行われています。しかし、ストレスや水分不足によって唾液力が低下すると上記のような働きが弱まり、虫歯の進行を防げなかったり、体調を崩しやすくなったりします。

唾液力の低下を確認するためには、その「質」と「量」をチェックしよう。

唾液力を最大限に発揮するためには、その「質」と「量」が重要になってきます。
下記のチェックシートで、まずは自分でチェックしてみましょう。

【唾液の質チェックシート】

  1. ヨーグルトなどの発酵食品をあまり食べない
  2. 冷たい飲み物や食べ物をよく摂取する
  3. 人よりごはんを早く食べ終わってしまう
  4. 脂っこいものや肉が好き
  5. 体操や散歩など簡単にできる運動でも面倒くさくてほとんどしない
  6. よく便秘になる、あるいは下痢になる

【唾液の量チェックシート】

  1. 飲料水が手放せなく、いつも持っている
  2. 食事のとき、食べ物をみそ汁やお茶などで流し込んでいる
  3. 口の中がネバネバする、あるいはパサパサしている気がする
  4. 気がつくと口で呼吸をしている
  5. 口の中に口内炎などの傷ができやすい
  6. 歯磨きをしているのに虫歯が多い
神奈川歯科大学・槻木恵一教授によると、「はい」にチェックが3個以上ついた人は唾液の質や量が落ち、正常な働きがそこなわれている可能性があります。ただし、唾液の質と量の改善は、日常生活の中で簡単に行うことができます。次項で、その具体的な方法をみていきましょう。

唾液の「質」を高めるためには

唾液の質を高めるためには、唾液の中に含まれるIgA(免疫グロブリンA)という免疫抗体に注目します。IgAは「粘膜免疫」とも呼ばれていて、さまざまな病原菌に幅広くくっつく守備範囲の広い粘膜免疫です。唾液中のIgAが増えると、質の向上につながっているといえます。増やすためにおすすめの方法は「ヨーグルトや納豆などの発酵食品を食べること」と、「ストレッチなどの軽い運動」を行うことです。例えば、100gのヨーグルトを食べる、肩を回すなどの簡単なストレッチを5分行う、という習慣を約1ヶ月続けた場合、IgAの量が倍以上になったというデータもあります。

唾液の「量」を高めるためには

唾液の量を増やす方法として、「見る」「かむ」「押す」の3つの方法をご紹介します。
唾液腺
  1. 見る
    梅干しやレモンなど酸っぱいものの映像を見ると、自然と唾液が出てきます。これは今までに味わってきた味覚を思い出すことで、酸味を和らげるために唾液が自然と口の中に分泌される働きによるものです。
  2. かむ
    かむ度に唾液が作られる唾液腺が刺激される「そしゃく唾液反射」というものがおこるため、かむ回数が増えれば増えるほど唾液が出てきます。食事の際に意識的にかむ回数を増やしたり、かみごたえのある食材のメニューを選ぶことでかむ回数を増やすことができます。
  3. 押す
    口の周囲にある「唾液腺」を指で直接押してゆっくりマッサージすると、その刺激によって唾液の分泌が促されます。とくに耳のすぐ下にある「耳下腺」のマッサージはその効果がよく分かるポイントであり、普段の生活のなかでも気軽におこなうことができます。
    ※気分が悪くなったり痛くなったらすぐ中止してください。
暑くなって脱水状態におちいったり、ストレスある生活を続けていると、知らないうちに「唾液力」が低下してしまいます。
体の健康管理のため、そして初期虫歯の自然治癒を促すため
暮らしの習慣を整えて、良質な「唾液力」を維持していきましょう。